「自家消費型太陽光発電」とは、太陽光発電の電気を電力会社に売るのではなく、事務所、工場、倉庫など、自社の建物内で消費する手法のことをいいます。
上がり続ける電気代やBCP、環境問題の対策への必要性から、企業で自家消費型太陽光を導入するケースが増えています。
弊社にもよくお問い合わせをいただきますが、中でも「自社に最適な容量やシステムが分からない」というお声をよく聞きます。
そこで今回は、産業用自家消費型太陽光発電のシミュレーションで分かることを、実例を元に見ていこうと思います。
目次
全量売電型太陽光発電との違い
「全量売電型太陽光発電」とは、発電した電気を自社内では使わずに「すべて売電する」というものです。
かつて主流であった全量売電型太陽光発電は、屋根や土地面積に対して最大限に太陽電池パネルを設置して収支を計算するという、FIT制度を活用した収入目的の発電方法です。
最近では、FIT価格の低下や電気料金の上昇により、「売る」よりも「使う」方に利益が出るようになりました。
そのため、全量売電型よりも自家消費型が主流になっています。
自家消費型太陽光発電は、主に事業所で使用している電気を太陽光発電で賄うために設置します。
設置形態も「パネルを可能な限り載せて最大限の売電収入を得る」という形から「必要な分だけ設置する」という形に変化しました。
最適容量の算出が費用対効果に大きく影響することから、事前のシミュレーションが非常に大切なのです。
導入前にシミュレーションをする理由
●導入前の疑問や不安にお答え
太陽光発電システムの性能向上に加え、機器の値段が下がったことにより、太陽光発電で電気をつくるコストは以前に比べてかなり下がっています。
太陽光発電の効果や環境問題への貢献度合いを計るためには、事前に導入シミュレーションを行い、具体的な数値を見る必要があります。
それにより、投資に対する費用対効果を知ることができます。
●導入判断の材料に
シミュレーションで算出した具体的な数値を見なければ、導入要否の根拠が無く困ってしまいます。
弊社でお出ししているシミュレーションは、導入後の収支や税金、保険費用、ランニングコスト、廃棄費用など、効果をプラスマイナス両面から俯瞰できる資料になっています。
そのため、トータルで判断できる材料としてご活用いただけます。
シミュレーションに必要な資料とは?
太陽光発電の最適な出力を導き出すために必要となるデータが
- 建物の図面
- 1年分の電気料金明細
- 1年分の30分デマンド値
となります。
1. 建物の図面
太陽電池パネルの最大積載量を算出するために必要です。
図面をお持ちでない場合、衛星写真により簡易的に最大積載量を算出することも可能ですが、現地調査が必要となる場合があります。
2. 1年分の電気料金明細
太陽光発電設置後の効果を計算するためには、現在の電気料金単価や料金体系などを知る必要があります。
3. 1年分の30分デマンド値
30分デマンド値とは、30分間消費電力の平均値(kW)を計測したデータです。
業種、規模、人数、月、曜日など、様々な要因によって、需要家様ごとに異なる電力消費傾向を知るために必要となります。
電力会社へ依頼するか、またはご契約中の電力会社のウェブサイトからダウンロードすることで取得できます。
実際のシミュレーションを見てみよう
集めた資料を元に、シミュレーションを行っていきます。
下図のようなデータを算出し、太陽電池の最適な出力やおすすめプランを決めていきます。
【線グラフの見方】
●項目
・縦軸:【電力量】
・横軸:【時間】
●グラフ
・青線:【現在の電力使用量】
・赤線:【システム導入で想定される発電量】
・緑線:【発電した電気を自家消費する量】
・紫線:【どれだけ電力使用量が下がるか】、つまり削減効果
■シミュレーション例 1
下記左の線グラフは、ある事業所での現在の年間平均電力使用量と、システム導入によって想定される発電量を1つにまとめたものです。
こちらの事業所では1日中安定して電気を使われており、昼間に電気の使用量が増えています。
最も平均的な電力消費をしている需要家様です。
発電した電気を使う自家消費率の数値(円グラフ左)も91%と高く、買電電力量(円グラフ右)を37%削減できる結果となり、電力会社から購入する電力量を導入前よりも減らすことができる想定です。
こちらの需要家様の場合は、効率的に自家消費ができる試算になるため、余剰売電や蓄電池の導入よりも、買電量を減らすための自家消費をおすすめします。
■シミュレーション例 2
こちらの事業所の例では、青線の「電力使用量」が朝6時から増加し、さらに16時以降の夜間に電気の使用量が増える、という使い方をされているのが分かります。
電力使用量に対して、想定される発電量が赤の線になります。
さらに赤線の発電量のうち、太陽光発電の電気を自家消費した結果が緑の線になります。
結果、自家消費を行うことによって、青線の電力使用量を紫の線まで下げることができ、消費をしっかりと抑えることができる、という想定になりました。
そしてこの案件では左の円グラフの通り、発電した電気の83%を自家消費できており、昼間に購入する電力を太陽光発電によって削減できると想定されます。
ところが一方で夕方以降の電力消費が多いため、上記右の円グラフの通り、太陽光発電で賄う電力は全体の31%となり、総電力量の69%は電気を購入する、という試算になります。
こちらの需要家様の場合は、
・太陽光発電の容量を増やして余った電気を売電する
または
・買電電力をさらに減らしたい場合、蓄電池を設置して夜間の買電電力量を減らす
といったプランをご提案します。
■シミュレーション例 3
下記事業所の例では、10時、12時、15時に電力の使用量が低下しており、休憩時間に使用電力量の削減を行っていることがわかります。
このような場合、太陽光発電設備の出力設定をどの程度にすると良いか、ということをシミュレーションで確認していきます。
[Aプラン]
まず、太陽光発電設備の出力(グラフ赤線)を、休憩時の買電下限値程度に設定します。
[Bプラン]
もう一つのプランとして、太陽光発電設備の出力を買電電力(グラフ青線)のピークと休憩時の買電下限値の間に設定します。
円グラフを見てください。
Aプランでは自家消費率が74%であるのに対し、Bプランでは64%まで低下します。
そしてこの需要家様は、下記のグラフで分かる通り土日に稼働していないため、週末はほとんど自家消費ができません。
Bプランのように太陽光発電の出力を増やした場合、せっかく発電した電気が無駄になってしまいます。
その点を考慮すると、おすすめの方法としては
・太陽光発電の容量をさらに減らし、自家消費率を上げる
または
・余った電気を売電し、売電収入を得る
または
・蓄電池を設置して土日に発電した電気をためて平日に使用し、自家消費率を上げ買電量を減らす
といったプランをご提案します。
最適なご提案を行うために
太陽光発電は、かつての「発電した電気を売って収入を得る」という使い方よりも、「自家消費でより多くのメリットを得る」という時代になりました。
ですが見ていただいた通り、それぞれの需要家様によって季節や曜日、時間帯による消費傾向が違うため、正しくシミュレーションを行わなければ最適なシステムを導き出すことができません。
自家消費率を可能な限り上げつつ、パネルの枚数を調整して電力容量を増やすといった試算を、シミュレーション数値を見ながら細かく算出していくことが必要です。
そのため、事前のシミュレーションをしっかりと行うことがとても大切になります。
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